老後を見据えた家づくり│後悔しない「トイレの位置」の考え方

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老後の暮らしは「トイレの位置」で決まる のアイキャッチ 廊下からドアを開けてみたトイレの写真
にしこ

こんにちは、にしこです。

家づくりって、決めることがたくさんありますよね。
間取り、収納、設備、内装……その中で「トイレの位置」まで、じっくり考える余裕がない方も多いかもしれません。

でも、実はこのトイレの位置が、老後の自宅での生活のしやすさを大きく左右します。

高齢になり、体が思うように動かなくなったとき。
真っ先に大きな問題として立ちはだかるのが「排泄」です。

トイレで排泄できることは、人としての尊厳に直結します。
だからこそ、家づくりの段階で「老後のトイレ動線」を少しだけ想像しておくことが、将来の安心につながります。


目次

老後に「トイレの位置」が重要になる理由

なぜ老後になると、トイレの位置が問題になりやすいのでしょうか。

高齢になると、多くの方が夜間にトイレが近くなります。
夜中に何度も、寝室とトイレを行き来する生活になることも珍しくありません。

そのとき、

  • トイレまでの距離が長い
  • 動線が複雑
  • 暗くて足元が見えにくい

といった条件が重なると、
間に合わない不安転倒のリスクが一気に高まります。

若いうちは問題なくても、体力やバランス感覚が落ちてくると、家の中の移動そのものが大きな負担になるのです。


将来を見据えた「寝室とトイレ」の関係

将来を見据えるなら、寝室からトイレまで廊下で移動できる動線が安心

若い世代では、寝室を2階に配置する間取りも多いと思います。
ただ、老後を考えると、

  • 将来、1階に寝室として使える部屋があるか
  • そこからトイレまで、無理なく移動できるか

は、とても大切なポイントです。

その将来の寝室に、介護ベッドを置いた場合、
そこからトイレまでの動線はどうなるでしょうか。

多少距離があっても、

  • 廊下に手すりが設置できる
  • 直線的で見通しがよい

動線であれば、移動の負担は比較的抑えられます。


リビングを通るトイレ動線は要注意

寝室からトイレへ行く際、
リビングを通らなければならない動線になっている間取りもあります。

しかしリビングは、

  • 広くてつかまる場所が少ない
  • ラグや家具、小物が多い

など、転倒リスクが高い空間です。

老後の安全を考えると、
寝室からトイレまでは、できるだけ廊下で完結する動線が理想的だといえます。


夜間の移動を支える照明と足元の工夫

夜中のトイレ移動は、暗さも大きなリスクになります。

  • スイッチが押しやすい位置にあるか
  • 足元が自然に照らされるか

といった点も、間取りと同時に考えておきたいところです。

後付けの足元灯は手軽ですが、
コンセントやコードがかえって引っかかりやすくなることもあります。

将来、押し車や歩行器を使う可能性まで考えると、
壁にフラットに設置された足元灯の方が安心です。


ポータブルトイレという選択肢と現実

ベッドの横に置く、ポータブルトイレという方法もあります。
ただし、使ったあとの処理は避けられません。

  • 中身をトイレに捨てる
  • バケツ部分を洗浄する

これを家族が行う場合でも、
トイレまでの距離が遠いと、負担はかなり大きくなります。

結局のところ、ここでも
トイレの位置と動線が重要になってくるのです。


トイレの広さとドアの考え方

標準的な広さのトイレ。必要になったら横の壁に手すりを設置しましょう。

車いすでの介助を想定すると、
トイレ内は「幅1650mm × 奥行き1650mm以上」など、かなり広さが必要になります。

一般的な戸建て住宅では、若いうちからそこまで広く取る必要はないと思います。

ただし、ドアの開口幅は意識しておきたいポイントです。

にしこ

実際に、利用者さんの自宅の動線を確認する中で、「あと少し入口が広ければ、車いすが入れるのに」と感じる場面を何度も見てきました。

  • 有効開口幅(実際に通れる幅)は800mm以上あると安心
  • ドアを開けて、車いすの頭が入れば便座への移乗が可能

また、入口が広ければ、多少中が狭くても、ドアを開けたまま介助することも可能です。
その意味でも、開口幅は将来への“余白”として考えておくと安心です。


トイレのドアの注意点

ちなみに、ドアは可能であれば、引き戸が安全で使いやすいです。
ただ、ドアの引きしろのスペースやにおいの問題から、開き戸(外開き)を選ぶケースも多いのが現実です。

開き戸の場合は、動線を考えて左右どちらに開く方がよいかも考えましょう。
また、間取りによっては90度開かない場合も多いです。
間取り図だけでなく、実際の開口幅を確認するようにしましょう。


なぜ「車いす介助前提の広さ」にしなくてもいいのか

トイレを計画するとき、「将来は車いすになるかもしれないから」と、最初から介助前提の広さを考える方もいるかもしれません。

ただ、実際に高齢になってからの経過を見ると、
車いすでトイレを利用する期間よりも、「少しふらつきはあるけれど、歩いてトイレに行ける」期間の方が長い方が多いのが現実です。

この時期は、実はトイレが広すぎることが、必ずしも安全とは限りません。
壁までの距離が遠く、手すりや壁にとっさにつかまりにくくなるからです。

少し狭めの空間であれば、ふらついたときにすぐ壁に手をついたり、体を預けたりすることができ、転倒まで至らずに済むケースも多くあります。

すでにご家族に車いすを使用している方がいる場合は、もちろん車いす介助を想定した広さが適しています。
ただ、そうでなければ一般的で無理のない広さを確保するという考え方も、十分に現実的だと思います。


すでに高齢の家族がいる場合の工夫

すでに高齢のご家族と同居している場合は、間取りや設備だけではカバーしきれない部分も出てきます。

例えば、トイレは高齢者のヒートショックが起こりやすい場所のひとつです。
冬場は、人感センサー付きの小型ヒーターを設置して、気温差が大きくならないよう注意しているご家庭もあります。

また、トイレに急いで入る際、開き戸を開ける時にバランスを崩すことが心配で、夜間はトイレを開けっ放しにしている方もいます。

「夜、ちゃんと電気をつけてトイレに行けているか心配」という声もよく聞きます。
人感センサー照明があっても、点灯までに一瞬暗さを感じたりすることもあるため、
あえて夜間は廊下とトイレの照明をつけっぱなしにしているという選択をしている方もいます。

「必ず消す」「必ず自動化する」と決めつけず、その家庭にとって一番安心できる方法を選ぶことが大切だと感じます。

まとめ│手すりは後からでいい。場所だけは今しか決められない

家づくりでできることと、暮らしの中で調整していくこと。
その両方を組み合わせて考えることが大切だと感じます。

若いうちから、家中に手すりを付ける必要はありません。
手すりは、必要になったタイミングで、介護保険を使って設置することもできます。

その時の身体状況によって、必要な場所も変わってくるからです。

ただし、トイレの場所だけは後から変えられません

なんとなくでも構いません。
「将来、1階のこの部屋にベッドを置いたら、トイレまで移動できるかな?」
そんなイメージを持っておくだけで、老後の暮らしやすさは変わります。

高齢になっても、自宅で長く安心して生活するために。
家づくりの参考にしていただけると嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました✨

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